バカンスの醍醐味とは
Les délices des vacances
さて、バカンスの醍醐味、それは計画しないということです。浜辺で何もしないでじっとしていたり、海で泳いだり、山の中を散策したり、市場を冷やかしに行ったり、バーベキューやロゼワインの食前酒、トランプなどなど、気分の赴くままに過ごすということでしょう。
私は「時間の無駄」という考えさえも捨てたいと思っています。バカンスとは、時間を考えずにゆっくり過ごすことです。誰もが自然の流れの中で自分のペースで過ごすのです。
Au programme, pas de programme. Probablement lézarder sur la plage, se baigner dans la mer, quelques randonnées, promenades sur les marchés, barbecues, apéritifs au vin rosé, jeux de cartes… J’aime l’idée d’abandonner l’idée de « perte de temps ». En vacances, on laisse passer le temps, tranquillement, sans même le compter. On vit avec le soleil et avec son propre rythme biologique.
3週間というのは、何日間かは何もしないために必要な最低限の時間です。のんびり過ごし、暑さや太陽を楽しんで、決まりごとなんかクソ喰らえ!ですね。自分の声に耳を傾けて1日1日を大切に過ごす、それがバカンスなのです。
Trois semaines, c’est avoir le temps de prendre au moins quelques jours pour ne rien faire. Juste se laisser vivre, profiter de la chaleur, du soleil et de l’absence de contrainte. C’est vivre au jour le jour en s’écoutant sincèrement.
※フランスのバカンス制度について
フランスの一般家庭にとって、夏の長期休暇(バカンス)は一年の最大の行事で、8月にはパリなどの大都市の経済活動は休眠状態になる。
実は、19世紀にはバカンスは富裕階層の慣習であり、避暑地で夏を過ごすことはステータス・シンボルだった。
バカンスが労働者の権利となったのは、1936年に法制化されてからだ。同年、全国で多数の労働者によるストライキが決行され、多くの工場が占拠される。その直後に政権に就いたレオン・ブルム内閣は、労使の代表を招いた協議の結果、週40時間労働(現在は35時間)、賃金アップと2週間の連続休暇を約束し、バカンスが民主化された。
フランス人は、今でもよくストライキやデモを決行するが、自分たちの権利を獲得するために闘う気概が当時から育まれていたのだろう。
なお、所得が低く、社会的な扶助を受けている階層には、バカンス用に交通費や滞在費の補助制度もあるという。
重要なのは、フランスでは「良く働き続けるには、まとまった期間を休む必要がある」という国全体の思想的な土壌があることだろう。
そのことを端的に表しているのが以下の文章だ。少し長いが、引用する。
「なぜ働く人には、まとまった期間の休みが必要なのか」
(略)
~歴史学者アンドレ・ローシュ氏著「フランスのバカンス 1830年から現代まで」の中に、ブルム内閣で年次休暇の運用支援を担った閣僚レオ・ラグランジュの発言が引用されていました。バカンスの意義について、ラグランジュはこんな主張をしていたのです。
「労働者や農民、失業者には余暇を通して、生きる喜びと、人としての尊厳の意味を見出してほしいのだ」
「余暇」と日本語に訳したこの言葉は、フランス語原文ではLoisir。フランスの代表的な国語辞典ラルースでは、「強制された職業以外の、自分の好きなように使える自由な時間」と定義されています。
まとまった年次休暇とは、余暇=「自分の好きに使える、自由な時間のこと」。そして余暇とは、生きる喜びと、人としての尊厳を知ることができる時間である。その時間を労働者や農民にも持ってほしいというのが、年次休暇を「原則連続取得で、15日間」とした、政府の明確な意向でした。
(『休暇のマネジメント 28連休を実現するための仕組みと働き方』高崎順子著 KADOKAWA刊より)
※参考文献・参考サイト
『休暇のマネジメント 28連休を実現するための仕組みと働き方』高崎順子著 KADOKAWA刊
フランスのバカンスと年次有給休暇 鈴木 宏昌 (早稲田大学名誉教授)
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2012/08/pdf/045-054.pdf
日本語訳:カレンス 法子 監修:カレンス・フィリップ