私は鳥取県を何度も訪れたことがあります。大都市で生まれ育った私にとって、鳥取県は幻想的な場所です。自然が美しく、人々が親切だからこそ、何度も足を運ぶことになったのです。地元の方々の紹介で、偶然、大山の夏祭りに行く機会を得ました。そこでは妖怪が展示された神社を見学し、日本仏教の本堂とも言える寺院も訪れました。
記録によれば、日本に仏教が伝わったのは552年のことです。そして最初の寺院である飛鳥寺は596年に完成しました。本作の舞台となった大山寺は、約1300年前の700年頃に創設されたと伝えられています。つまり、仏教が日本の奈良地方に根付いた後、わずか100年ほどで、海に面した辺境の鳥取県にもその影響が及んだのでしょう。
この小説のために私は約1300年前の架空の物語を紡ぎました。百済の滅亡、主人公母子の逃亡、そしてユキとの愛を描きました。若き男女である二人は時間を超え、現代で同じ名前、別の姿で再び巡り会います。そして彼らは受け入れ難い複雑な過去について徐々に理解を深めていきます。登場人物の多くは、実際にその時代に存在した歴史上の人物たちです。
百済の佐平(宰相)である成忠、義慈王、その息子である扶余豊璋、唐の将軍蘇定方、日本の推古天皇、そして新羅の金庾信などは、いずれもその時代の人物です。また、鳥取県の三佛寺、大山寺、そして扶余の三忠祠も実在する歴史的遺産です。一方で、陳、宣姫、卓将軍といった主人公たちは架空の人物です。宣姫を愛した罪悪感から大山の人里離れた寺で孤独な修行を続ける役割として登場する「役行者」僧侶は、日本の神話に登場する人物であり、この小説では作者の想像力によって描かれました。彼は宣姫への歪んだ愛情からユキに呪いをかけましたが、後に深い後悔の中で大山寺を創設し、ジンとユキがその呪いを解くのを助けます。そして二人は愛を成就させます。
ところで、「くノ一」という言葉の語源は非常に興味深いものです。女性忍者を指す言葉であり、漢字の「女」を分解すると日本語で「く(ク)」+「ノ」+「一(イチ)」となります。
私たちにもよく知られている忍者は、江戸時代以前からスパイ、情報収集、暗殺など多様な諜報活動を行っていた存在です。その中で女性の忍者である「くノ一」は、主に諜報や心理戦に特化し、男性忍者が接近しにくい場所(宮中や高位官僚の邸宅など)で活動しました。彼女たちは魅力を活用した心理戦や変装、毒殺といった技術に長けており、女性という身分的特徴と社会的偏見を利用して相手の警戒心を解き、目標を達成したと言われています。
本作のユキは、島根県出身で困難な家庭環境のためにくノ一となり、新羅の金庾信から命令を受けた地元の「大名」に雇われ、主人公ジンを暗殺する使命を負います。しかし、ジンと恋に落ち、葛藤に苛まれるようになります。ジンを殺さなければユキの家族が殺されるという宿命的な選択を迫られた彼女は、ジンの代わりに宣姫を殺しますが、最終的にユキの家族も彼女の命令違反の報復として忍者により殺されてしまいます。
新羅と百済の対立が朝鮮半島を越えて日本にまで及び、主人公たちに両親の死という悲劇をもたらしました。それが二人に呪いとして残りますが、この全ての呪いは二人の真実の愛によって解かれるというのが本作のあらすじです。
二人の主人公は現代と遠い過去の間を行き来します。小説のドラマティックな展開のために、主人公たちの時間旅行を過去の韓国と日本が友好関係にあった時代と現代との間に設定しました。その友好が最も深かった時代として、韓国の百済と日本の大和朝廷の時代を選びました。それが1300年前という設定の理由です。
2025年10月
キム・ソンイル