戦争経験者が少なくなり、戦争は遠い過去のこと、今の平和な日本とは関係ないと思う若者も多いだろう。しかし、ウクライナの状況からは、やはり戦争はすぐそこに、出現するものだと思い知らされた。そこには国家に動員され、自分の行為を正義と疑わず他国へ侵略する若者がいて、そして日常の中に殺害や拷問やレイプが横行するようになった侵略された国と人々がいる。本書は、父の手記を元にして書いたものである。85年前に農村の一青年が辿った道を知ることで、戦争が日常になっていった歴史を知ってほしい。そして私たちはあらためて、戦争の動機となるものとその実態を目をこらして見つめ続けなければならない。この本がその一助となることを切に祈る。
東谷 仁